ステーキ食べた
ステーキ食べました。二週間で二回もステーキ食べた。感動的。ステーキは美味しい。
昔を思い出す。森を駆け回って、先っちょにトキントキンに磨いた黒曜石を縛った槍(自信作です)でマンモスを倒して、みんなで駄弁りながら捌いた肉をキャンプファイヤーで焼いて食っていたのを思い出す。
外は茶色で中が赤色というのがいい。コントラストが美しい。
地球も同じ、真赤なマグマを土が優しく包んでいる。
ソースはいらない。塩胡椒で十分。たまにワサビでいい。
僕はナイフとフォークを上手に使う。カチャカチャという音がまるでJazzのようだ。そして切り難い肉ほど優しくナイフを入れる。
大きな力は広く作用し、小さな力は細かく働く。困難は分割せよ。細かく分割した困難に全力でぶつかってはいけない。服についた糸屑を摘む程度の力でいい。
ステーキの食べたあの日からステーキのことばかり考えてしまう。我々に気づいたマンモスが咆哮の寸前に息を吸うあの沈黙に対する緊張と解放も、ステーキを食べてしまったら忘れてしまう。
気づいたら右手にエアナイフ、左手にエアフォークを持っている。電車を待ちながら丁寧にエアステーキを切る。食べることはしない。エアステーキは食べられない。Airだから。吸うことできない。Airなのに。
ベジタリアンの人はステーキを食べない。仕方がないことだ。昔は理解できなかった。勿体無い。人生半分損している。
でも今ならわかる。わかるけど僕はステーキを食べる。でもわかっている。彼らにとって大事なことは自分のルールを自分で考えた理由でもって遵守することなのだ。お肉はアニマルズのことを考えて食べない。わかる。アニマルズは愛おしい。殺したくない。
そして彼らは野菜を食べる。なるほど。彼らは偉い。1日10個ずつ英単語を覚えよう、いつかハリーポッターを原書で読むんだ!美しい。かわいい。同じことだ。毎日続ければ、自信になってくる。自信は日々を良くする。炎がステーキの旨味を引き出すように。
マンモスごめんなと思いながら次のステーキの計画を立てる。僕はステーキを食べる人生を選んだ。ありがとうマンモス。あの世で生きてるうちに食べてきたアニマルズにリンチされるかもしれない。
でもめげない。きっとわかってくれるはず。わかってもらえなかったらまたその時考える。
今夜はステーキの夢を見るかもしれない。素敵なステーキ。ふかふかのステーキの上で寝ることにする。おやすみ。